起業家はもっと Ask を(さらば与えられん)
かつて Paul Graham が「この 30 年間でもっとも興味深いスタートアップの創業者を 5 人挙げて欲しい」と尋ねられたとき、挙げられた中で最若年の創業者が Sam Altman でした。彼は 19 歳にして大人びて見え、素晴らしい精神力と適応力、そして決断力を持っていたそうです。
そんな Sam Altman がインタビューの中で、『キャリアの早い段階で最も手に入れたかったアドバイスの一つ』として挙げているのが「自分の欲しいものを要求すること (ask for what you want)」でした。また Sam による Stanford の講義の最後には、『起業家が理解するべき重要な 5 つのポイント』の 5 つめとして「あなたは、あなたの欲しいものを求めなければならない」と言っています。
確かにセールスや採用、資金調達など、すべてにおいて起業家側から誰かに何かを求めることを始めなければ何も始まりません。
というのも、受け手となる人たちのことを考えてみれば、人はなかなか他人のことを察することができないからです。それに明確な要求がなければ、要求の受け手は Yes/No の決断から逃げてごまかす傾向にあります。
Sam いわく、多くの起業家は自分たちの要求を相手に明確に求めず、十分にアグレッシブではないことで、事実上自分たちの首を締めているようなものだ、と言っています。だから「どんなに攻撃的で、行き過ぎているように自分では感じても」「No と言われて傷つきたくなくても、失敗したくなくても」、明確に ask をしなければ欲しいものは手に入らない、ということを強調しているのではないかと思います。
そしてアグレッシブに ask する (求める) ことは優れた起業家の特徴だと彼は述べています。
多くに No と言われても、たまに必ず Yes はある
またそうした ask の中で、起業家はたくさんの No を受け取ると Sam は言います。しかしたくさん ask をし続けていると、ときどきは Yes を受け取ることができます。
Sam が挙げている例としては、たとえば
- 仕事をやめて自分たちのチームに参加してほしい
- 大企業と取引したい
などなど、このあたりを明確に ask できているかといえば、恐らくそうした ask が苦手でてきていない人も多いはずです(私も苦手です)。
学生のプロジェクトを見てても、少し周りに ask すれば簡単に進められるのでは、と思うときがあります。私の尊敬する VC の一人も、「起業家はアグレッシブに相談や要求をしてきてくれたほうが助かる。こちらとしては助けたいし、できないものにはできないって言うから(笑)。でも何が欲しいか分からないと助けようがない」というようなことを仰っていました。
もう少し意識して ask を増やすこと、それが何かことを進める上で重要なのかもしれません。US の人たちでもそれができないのであれば、謙虚になってしまいがちな日本人であればなおのことです。
「求めよ (ask)、さらば与えられん」とは新約聖書のマタイ伝の言葉です。本来的には「神を求めよ」という意味だそうですが、アグレッシブに求めつづけることは特に何かを進める起業家やリーダーのような人たちには特に必要なことなのかと思います(もちろん直接的に ask するのが最善ではない可能性もあると思います。オリジナルズの例など)。
私も色々と ask されることが増えてきていますが、東大関連スタートアップの相談と 3 月に発売予定の書籍の販促以外は、基本的にランチや会議をお断りしている現状です。
ただそうした条件に合致する ask だったら歓迎ですし、一度 ask いただければ「こうすればうまく話に乗れるかもしれません」という対案を出せるときもあります。そうした経験からも、誰かにダメ元で ask する価値はあるのかなと感じています。
なお東大生や先生の皆様が ask しやすいように、東大産学協創推進本部では起業に関する相談窓口を設けているほか、現役東大生の皆さんには Spring Founders Program (SFP) というプログラムを設けています。SFP の締切は 1/23 ですが、事前のアイデアの相談も受け付けてるのでお気軽に ask してきてください。