注目されるグローバルリスクとマクロトレンドは、社会的インパクトの大きな事業のアイデアのヒント
ダボス会議などを主催する World Economic Forum (WEF) が、1/11 に Global Risks Landscape 2017 を公開しました。今年は気候変動が可能性とインパクトの面で注目されているようです。
WEF の 2017 年の同レポートでは、以下の 5 つが特に注目するべき現在のリスクと対応する動きとして挙げられています。恐らくこれらは来週から始まるダボス会議でも大きく取り上げられるのではないかと思います。
- 経済の成長と改革(格差等)
- 社会コミュニティの再構築(post-truth や Breixt に見るコミュニティの分断)
- テクノロジによる”破壊”のマネジメント(雇用のリスク等)
- グローバルでの協調の強化(兵器や貿易)
- 気候変動への対応の加速
こうした世界的なリスクは単なる脅威としてではなく、解決すべき課題として、そしてビジネスの機会としても捉えられます。なので、メガトレンドやグローバルリスクを把握して、そこからどういう未来になるのかを予想してその領域で起業する、というのも一つの手かもしれません。
更にそうした社会的な課題を解決するビジネスには、徐々に投資のお金がつきやすくなっています。たとえば、Bill Gates や Jeff Bezos などが中心となっている Breakthrough Energy Coalition は 2016 年の末に新たにベンチャーファンドを立ち上げ、エネルギー、農業、製造、ビルなどに 1,000 億円規模で投資することを発表しています。年始の Economist にも、インパクト投資がニッチからメインストリームになりつつあるという記事が掲載されました。
さらにいえば、社会的課題の解決に対してテクノロジが必要だと認識が高まっているためか、近年ダボス会議に多くのテクノロジ企業が呼ばれるようになっているほか、サンフランシスコに WEF が拠点を作ったことからも、企業やソーシャルセクタからテクノロジへの期待が高まっていることも見て取れます。
同様に Y Combinator の Requests for Startups (YC が求めるスタートアップのアイデア) はこうしたトレンドを意識したのか、スタートアップに求めるテーマとして「水」が追加されたり、「未来の都市」というテーマが YC Research 等の候補に挙がっています。
ただしビジネスにする上で重要なのは「タイミング」なので、こうした社会的な課題があるからといって早く始めすぎると失敗してしまいます。それに多くの予測は長いスパンであればあるほど大抵外れます。
なので、そうしたトレンドやビッグリスクをどこまで信じるかは個々人で判断しつつも、とはいえそうした長い目で課題を観てみることで気付くことは多いのでは、と YC の動きなどを感じています。
そうした観点から、最近個人的に良くみかけるなと感じるトレンドについて、思い出せる範囲でまとめておきたいと思います。個人的には以下の 5 つあたりを最近はよく見かけます。またそうした課題に対して、どういったスタートアップのテクノロジ領域が今あるのかというのを簡単にですがまとめてみます。
- 人口増と人口構造の変化
- 都市化
- 気候変動
- テクノロジ
- 雇用問題
1.人口増と人口構造の変化
特長
- 2056 年に地球上に 100 億人の人口予想 (日本はそのとき 9,000 万人弱)
- インドとアフリカの発展
- 長寿化と高齢化社会、労働人口の減少、ライフシフト
- 新興国での人口ボーナス期の短期化(中進国の罠)
発生する課題
食料不足、水不足、エネルギー不足、社会保障
解決策に関連するテクノロジ領域
AgTech、FoodTech、GovTech、エネルギー、HealthTech、BioTech、EdTech、創薬
2.都市化
特長
- 人口の都市部への一極集中(2050 年までに世界人口の 2/3 が都市に済む)
- 先進国の人口減少と相俟った、スラム化や地方都市でのインフラのあり方の再考
- テクノロジによるスマートシティ構想
発生する課題
インフラの再構築、食料不足、水不足、住宅不足、雇用不足、環境問題、伝染病のリスク、犯罪、交通渋滞
解決策に関連するテクノロジ領域
交通、輸送、住宅、医療、ロボティクス、コミュニケーション、ReTech、RetailTech
3.気候変動
特長
- 労働生産性や作物収穫量の減少
- 生態系の破壊や海面上昇
- 予想困難な異常気象や自然災害
発生する課題
食糧不足、エネルギー問題、異常気象による経済インパクト、移民
解決策に関連するテクノロジ領域
FinTech、AgTech、宇宙、クリーンエネルギー、マテリアル
4.テクノロジ
特長
- IoT やエッジデバイスの普及とハッキングのリスク
- ゲノム編集の容易化とパンデミックのリスク向上
- 兵器の質の変化
発生する課題
パンデミック、サイバークライム、破壊兵器
解決策に関連するテクノロジ領域
AI、ロボティクス、セキュリティ、合成生物学、宇宙
5.雇用問題
特長
- テクノロジの発展による中間層の雇用の減少(テクノロジ失業)
- コミュニティや格差の拡大
- 教育費の高騰
発生する課題
教育(生涯教育、再訓練含)、格差、治安問題
解決策に関連するテクノロジ領域
AI、ロボティクス、EdTech、GovTech、エンターテイメント
以上、私の周りでよく聞くトピックについてまとめてみました。
全く別の観点からは Taleb のこの記事もお勧めです。