シリコンバレー株式会社、「メタ企業」としてのアクセラレーター

Taka Umada
4 min readDec 24, 2016

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シリコンバレーはある種の「シリコンバレー株式会社」である、としばしば言われます。

何故ならスタートアップ一社一社はシリコンバレー株式会社の一部門のようなもので、人材のスタートアップ間の転職は部署間異動のようなものとして認識されているから、というのが理由のひとつです。それにシリコンバレーという地域全体が「テクノロジで新しい価値を生む」という共通のカルチャーがある点も見過ごせません。

一方、Sam Altman は「なぜシリコンバレーは機能するのか」というエッセイの中で、「Y Combinaor は meta-company (メタ企業) のようなものだ」と書いています。あるいは Y Combinator は系列 (Keiretsu) だ、とも言われます。

確かに Y Combinator はスタートアップの企業群を束ねる高次の企業のような機能をしているという見方が可能です。Y Combinator が支援するそれぞれの会社は法人として別であるものの、YC という傘の下で緩くつながっておりお互いに連携している、という意味でです。このメタ企業や系列 (Keiretsu) という概念は上述のシリコンバレー株式会社にも通じるものではないかと思います。(とはいえ日本的な系列会社よりももっと現代的な繋がりのようにも映りますが)

では具体的に YC がメタ企業として何をやっているかといえば、たとえば Y Combinator に入った B2B のスタートアップは、プロダクトをまずは同じバッチのスタートアップや YC を卒業したスタートアップに使ってもらう、といったことをやっているそうです。また Transcriptic (YC W15) は YC を卒業したスタートアップのサービスの $20,000 のクレジットを YC が支援した企業に提供するなど、YC 企業間でパートナーシップを結ばせるようなこともしています。さらに YC 参加企業同士がお互いのノウハウの交換なども行われていると聞きます。YC 卒業後の同窓会の話も聞いたことがあります。

かつて KPCB も “系列 (Keiretsu)” を意識していたようですし、今は First Round Capital が似たような試みをしています。他の VC も投資先を「ファミリー」としてうまく連携させようと試みています。

Paul Graham は、「スタートアップを始めるようとすることは、意識しようとしまいと、”パイの誤り (Pie Fallacy)” を反証しようとしているのだ」といったようなことを述べています。つまり、単に同じサイズに固定化されたパイを争うのではなく、新しい価値を生んでパイを大きくするのがスタートアップの戦い方だ、ということです。スタートアップは新しい価値を生むのだから、お互いに助け合った方が良い、というのは確かにそのとおりだと思えます。

今現在、日本国内にそうしたスタートアップの Keiretsu やファミリーが仮に無いとしても、もし日本のスタートアップのエコシステムの中で、基盤となる共通のカルチャーを持っている群がいるのであれば、お互いに連携したほうが得なときはきっとあるはずです。またスタートアップ以前のプロジェクトであっても、連携や情報交換等も有効である場面があると思っています。

連携の前提となる共通のカルチャーを持つことにはまだ困難を感じる部分もありますが、テクノロジなのかビジネスモデルなのか研究発スタートアップなのか、ある程度共通のカルチャーを持つスタートアップやグループ同士がどういう環境であれば連携しやすくなるか、といったことなどを来年には考えたいなと思います。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Keiretsu.svg

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Written by Taka Umada

The University of Tokyo, Ex-Microsoft, Visual Studio; “Nur das Leben ist glücklich, welches auf die Annehmlichkeiten der Welt verzichten kann.” — Wittgenstein

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