弱いスタートアップの思考

弱いロボットの思考という考え方があります。

たとえばルンバを思い浮かべてください。ルンバは椅子やテーブルにぶつかりながら進みます。椅子に引っかかって四苦八苦しているルンバを見たとき、私たちはルンバのために少し椅子を引いてあげたりします。

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悪戦苦闘するルンバ from https://vimeo.com/101262504 (video by Geekzine Mexico, CC BY 3.0)

夜遅くに家に帰ってくると、ルンバは風呂場のドアを自ら閉めて息絶えていることもあります。そんなとき私たちは「仕方ないな」と言いながら、充電ゾーンに戻してあげたりします。

ルンバは不完全で、ある意味私たちと協力しながら掃除というタスクをこなしています。そして先ほど挙げた弱いロボットの思考という本では、このルンバをこのように表現しています。

このロボットの<弱さ>は、わたしたちにお掃除に参加する余地を残してくれている。あるいは一緒に掃除をするという共同性のようなものを引き出している。

その他の弱いロボットの実例はこちらの日経新聞の記事の動画などでいくつか挙げられていますが、以下の1分弱の動画も弱いロボットに関する動画が概念的を理解するうえでは便利なのではないかと思います。

この動画では、道端に弱いロボットがいるからこそ、子供たちが少し立ち止まって会話が生まれるシーンを描写しています。つまりそのロボットを通して子供たちの間に共同性が生まれた、と捉えることも可能です。

私たちはスタートアップの領域においても、同様のことを経験しているのではないかと思います。

つまり、複数の異なる支援者たちが、同じスタートアップを支援することを通して、その支援者たちの間で共同性を引き出している様子を、です。

弱いスタートアップを通して支援者同士がつながる

決してスタートアップが弱いというわけではありません。もともとの弱いロボットの思考でも、その弱さとは「どこか不完全だけれど、なんだかかわいい、放っておけない」というものとされており、いわゆる弱さではないとされています。そして「思わず手助けするなかで、手伝ったほうも、まんざら悪い気はしない」とも言及されています。

スタートアップも同様で、どこか不完全だけれどどこか放っておけない、そして手伝っても悪い気はしないといった存在と感じる人も多いように思います。

認知心理学者のトマセロは、他人との間で気持ちや目的などを共有することを「共同注意」と呼んでいます。私たちは恋人のように見つめ合うのではなく、夫婦や友達のように同じ風景や同じ対象を並んで見つめることができます。

同様に、「同じスタートアップ」という共同注意先となる支援先を持つことで、支援する人同士がつながるきっかけを作ることができるのではないか、ということを考えています。

実際に私の周りでも、あるスタートアップを支援する人たち同士が仲良くなる事例を多く見てきました。一人の学生の困りごとを複数の学生が手伝って解決することで、その手伝った人たちの中で共同性とも呼ぶべき何かが生まれてくる様子も何度も見てきています。

昨今流行りのオープンイノベーションでも、大企業同士の 1:1 の関係性、つまり二項関係の中で表れてくるだけではなく、大企業同士が『弱い』スタートアップを介してつながる、いわば三項関係を結ぶという可能性もありそうです。

FoundX Supporters Program

そこで東京大学卒業生向けのスタートアップインセプションプログラムである FoundX では新しい試みをしたいと思っています。それが FoundX Supporters Program です。

FoundX Supporters Program では、FoundX に入った超初期のスタートアップを支援する東京大学の卒業生をサポーターとして集め、サポーターの皆さんがスタートアップを支援することを通じて、卒業生の皆さんに新たなつながりを作る、というものです。

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卒業生ネットワーキングのためのネットワーキングではなく、「FoundX に入った、大学の後輩が作ったスタートアップを支援する」という明確な目的のもとで、副次的に生まれてくる卒業生ネットワークを作れないか、と考えています。

成功する起業家は「居場所」を選ぶ』にも書きましたが、卒業生ネットワークが強い大学ほどその大学関係者のスタートアップは成功する傾向にあり、さらに同じ大学の人からの特定の依頼は、違う大学の人からの同等の依頼に比べて 1,355% 受け入れられることが高かったSansan の論文読み会の資料等も参照)、といった調査もあります。

大学の卒業生ネットワークを作ることは起業家にとって有効であり、そして他のネットワークよりもうまく機能する可能性が高そうです。

そこで、こうした考え方に共感してくれる東京大学の卒業生の方を募集しています。特に現状は以下のような方々を募集しています。

  • 顧客インタビューに乗ってくれる方
  • 初期顧客として導入していただける方
  • 起業家としてのノウハウを持っている方
  • 技術的な知識を持っている方
  • ドメイン知識を持っている方(現在は、ロボティクス、漫画、保険、工務店などを募集しています)

(※ ただし現在はβテスト中のため、Supporters Program の参加者自体はまだ広く募集はしていません。Stanford の StartX と同様に、既にプログラムに参加している複数人からの推薦を受けた方のみ、プログラムにご招待しています)

そして支援してくださる皆さん同士がつながりを作るための、サポーター向けのコミュニティ活動も行っていきたいと思っています。このプログラムを通して、東京大学の卒業生同士が再びつながっていくことができれば、それは大学にとってもかけがえのない財産になります。

また、「自分ではスタートアップをしないけれど何か手伝いたい」という、現場レベルの東大卒業生の皆さんにこうした取り組みに関わっていただくことは、スタートアップのエコシステムを拡大していくうえでとても重要だと考えています。もちろん過剰なお手伝いはスタートアップに悪影響を与えてしまうので、そこまでは求めていません。しかしスタートアップの成長を一緒に見つめていきたいという人がいれば是非 FoundX のサポータープログラムにご注目ください。

また、「環境に影響される自分」という弱さを活かす『成功する起業家は居場所を選ぶ』という本を書いてます。ご興味あれば是非予約して購入してください。

Written by

The University of Tokyo, Ex-Microsoft, Visual Studio; “Nur das Leben ist glücklich, welches auf die Annehmlichkeiten der Welt verzichten kann.” — Wittgenstein

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