海外大学の卒業生スタートアップ支援の取り組みと「後払いのビジネススクール」

Taka Umada
5 min readFeb 28, 2019

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今回、東京大学の卒業生も対象にした FoundX というスタートアップ支援プログラムへの参加者募集を開始しました。実はそれに先立ち、海外大学での卒業生向けの取り組みを調査しています。

たとえば私が調べた限りだと、大学による卒業生のスタートアップ支援の流れは 2015 年前後をさかいに顕著になってきているようです。

提供するベネフィットはプログラムによって様々ですが、以下のような取り組みがなされています。

  • Harvard の Launch Lab X などは卒業生スタートアップを対象に9か月のプログラムを提供
  • UC Berkeley の Skydeck は6か月のアクセラレータにプラスしてVC機能も付けて、しかも投資の利益の半分を大学に寄付する
  • Stanford の StartX は大学ではなく NPO ですが、Stanford 関係者のスタートアップを支援
間違いやアップデートがあれば教えてください

特にこうした施設は寄付などで成り立っていることが多いようです。最近だと Oxford Foundry は LinkedIn の Reid Hoffman から約 1 億円の寄付を受けてその施設の運営に充てているようですし、私の古巣の University of Toronto は Royal Bank of Canada から約 2.5 億円の寄付を受けて、新たなスタートアップ向け施設を開設しています。

そこで FoundX も企業様からの寄付を集めて今回始めることになりました。ご賛同いただいた企業の皆様、本当にありがとうございます(まだ数社募集しております!)。

https://foundx.jp/sponsors/

後払いのビジネススクール

FoundX はアクセラレータに近いプログラムです。そしてアクセラレータは新種のビジネススクールだと言われています。

これは個人的な思いでしかないのですが、FoundX はそうした文脈で「後払いのビジネススクール」のようなものにならないかと考えています。

たとえばプログラムに参加したスタートアップにストックオプションを大学に寄付してもらうことで(これはまだ仕組みなどを含めて検討中ですしできるとも分かりません)、そのストックオプションが学費の代わりになる、という仕組みにできれば、スタートアップが成功したら大学も成功する、というインセンティブモデルを作ることができます。そうすることでさらに、我々もプログラム卒業後のスタートアップを支援するインセンティブが働きます。そしてスタートアップが大成功してくれれば、大学や FoundX 自体の運営も継続的になります。さらにいえば、 FoundX を初期の立ち上げからサポーターの皆さんによる支援まで、すべてが Pay It Forward で行われるような形になります。

従来のビジネススクールは先払いの学費が必要で、しかも数百万円から数千万円の資金が必要になります。こうしたお金が用意できるのは既に高所得な層か、富裕層だけでしょう。

もし上記のような仕組みが成功して、他大学に広まることがあれば、多くの人たちが高い学費を事前に払わずにビジネスの教育を受けることができるようになります。そうすれば、教育機会をより開けたものにできるのでは、と考えています。

もちろん、すべてのビジネスがスタートアップに適するとは限りません。しかし後払いのビジネススクールのような「スタートアップスクール」という学びの機会と環境を用意することで、より多くの人たちのゆとりを生み出すことにつながり、それがひらかれた社会を生み出すのではと考えています。

そのためにも FoundX という取り組みを成功させたいと思っていますし、初期の立ち上げに関しても、できれば企業様や個人からの寄付にて立ち上げを行いたいと考えています。

教育もスタートアップも未来への投資です。寄付という形でいただいた未来への投資を、私たちはエビデンスを活用した効果のあるやり方で使い、未来を背負うスタートアップを育てていきたいと考えています。ぜひ同じ思いを持つ方々からのご支援をお願いできれば幸いです。

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Taka Umada
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Written by Taka Umada

The University of Tokyo, Ex-Microsoft, Visual Studio; “Nur das Leben ist glücklich, welches auf die Annehmlichkeiten der Welt verzichten kann.” — Wittgenstein

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