スタートアップからスケールアップへ
イベントで Q&A を受けていると「スタートアップのスケールのノウハウはないのですか?」と聞かれることがあります。正直私もそこまでまとまった資料を見たことがないのですが、紹介する Blitzscaling (CS183C) などの講義などはあります。この記事はそうした参考資料の紹介です。
何はともあれプロダクトマーケットフィット
スケールアップの段階はプロダクトマーケットフィット (PMF) を達成した後と言われています。なのでまずは PMF について解説します。
Twitch の創業者である Emmett Shear いわく、プロダクトマーケットフィットに辿り着くまでの仕事は、岩を必死に押しながら山の坂を登るような大変で地道な作業であり、プロダクトマーケットフィットによって山の頂上にたどり着き、そしてプロダクトマーケットフィット後は山の下り坂を転がり落ちていく岩を全力疾走で追いかけるような、種類の違った大変な作業になる、とのことです (素晴らしいプロダクトを作る方法 Ⅰ (Startup School #05 翻訳) より)。
プロダクトマーケットフィットに到達すると、沢山の箇所が壊れているプロダクトにもかかわらず、顧客からの問い合わせや要望がひっきりなしに届きます。
そしてその市場からの要求に応じるために、営業やサポートを迅速かつ大量に雇ったり、プロダクトを改善しながらインフラを維持するために優秀な開発者を雇ったり、人が増えてきても会社が壊れないように文化やルールを作ったり、オペレーションを効率化したり、当局に目をつけられて規制を調整したり、さらなる成長のための戦略を考えたり、それらのために更なる資金調達をしたり…と、これまでになかった仕事がやってきます。
プロダクトマーケットフィットという言葉を作った Marc Andreessen は「プロダクトマーケットフィットとはマーケットがプロダクトをプルしている状態」と表現しますが、まさにマーケットや顧客からプロダクトが「引っ張られている」段階と言えそうです。
だから「プロダクトマーケットフィットを達成すると明らかにそうだと分かる」と表現されます (Emmett 等より)。今現在 PMF を達成しているかどうか分からないのであれば、まだ間違いなく達成していない、というのはよく聞くフレーズです。
スケールアップの参考資料
こうしたプロダクトマーケットフィットに到達するスタートアップは少ないため、その後のノウハウについてはあまり情報も出ていないような印象を受けます。大企業のマネジメントほど静的な状況でもなく、かといってPMF を目指す初期のスタートアップとも異なる、成長期のスタートアップのマネジメントについて情報が少ないのは構造的に仕方がないのかもしれません。
ただ、LinkedIn の創業者であり Greylock の VC でもある Reid Hoffman が積極的に最近資料を出しています。
たとえば Reid Hoffman はシリコンバレーには「スタートアップのノウハウ」だけではなく、「急激なスケールアップのノウハウ」も溜まっていることを指摘して、そうしたスケーリングのノウハウについて Blitzkrieg (電撃戦) をもじって Blitzscaling (電撃的なスケーリング) という言葉を作った上で Stanford の授業として展開しています。
この一連の講義では、Family, Tribe, Village, City, Nation と段階を分けて、それぞれのフェーズで考えるべきことをゲストスピーカーなどと一緒に話しています。
また最近では Master of Scale というポッドキャストを展開したりしています。
YC が行った How to Start a Startup でも、最後の授業がそうしたスケーリングに関しての授業です。PMF 後、だいたい創業から 12–24 ヶ月後の話だ、という前置きですが、もしかしたら参考になるかもしれません。
以前のイベントでスケールアップに関する参考資料について聞かれたので、私の知っているスケーリング段階の良い参考資料として上記を紹介しておきます。