Note and Vote: Google Ventures 風「チームでのアイデアの出し方&決め方」

Taka Umada
7 min readSep 12, 2016

スタートアップの皆さん向けに GV (旧 Google Ventures) の Design Sprint をして回った時期があります。結果的に Design Sprint そのものは根付かない場合も多かったものの、その一部の Note and Vote (ノートして投票) の手法は多くの組織で使われるようになったと聞いています。個人的にも Note and Vote は使い勝手がよくて頻繁に使う方法です。また同様の手法が Pivotal Labs でも使われているようです。

Note and Vote の方法(単純版)

単純化すると以下の様なステップです。

  1. ポストイットとペンを参加者全員に渡す。
  2. タイマーを 3 — 10 分仕掛けて、全員が黙ったまま個別にアイデアをポストイットに書いていく。このときポストイット 1 枚につき 1 つのアイデアを書き、できれば量を多く出す。また隣の人とは相談しない。静かに淡々と個人の作業を行う。
  3. ポストイットを壁に張り出す、多すぎる場合、貼りだすアイデアをいくつかに絞り、人にも読めるように清書する。ここでも静かに。
  4. 全員が張り出したポストイットを黙ったまま見ていき、良いと思ったものにシールを貼って投票していく。これも静かに、個々人で投票する。
  5. 投票結果をみて、最終意思決定者が良いアイデアを判断する。

4番目の投票の結果、丸型のシールで人気のアイデアに対するヒートマップが作られます(以下みたいな感じです)。

この手法の一部は Silent Critique や Dot Voting とも言われます。

こうすることで、個々人の意見を取り出しながら集団思考を避けることができます。また会議の時間も短く終わるというメリットがあります。すべての作業が大体 20 分ぐらいでできます。

なお、投票の前に

  • 質問の時間を取る(説明がないと理解できないものが出てきがち)
  • 似た意見をグルーピングする
  • 軸を作って分類する(タスクや仮説だと”重要度”と”緊急度”の2軸など)

といったようなことをすると投票がしやすくなります。その他にも色々な工夫を凝らしてより効果的にすることもできます。

■補足:より効果的にするために

従来の会議やブレインストーミングのやり方の問題点

アイデアを出すときに会議やブレインストーミングをすることが多いと思います。もちろんブレインストーミングもきちんとした方法でできるような環境や信頼関係があれば効果的ですが(Pixar のブレイントラストなど)、多くの企業やグループでは残念ながらそのような環境になっていません。その結果、

  • 発言量の多い人が話しすぎて全員の意見が拾えない、そもそも他の人が発言中は別の人が発言できない(ので時間が無駄)
  • 影響力の大きな人が意見を支配しがち

と、悪い集団思考に陥ってしまいます。

基本的に良いチームとは同じだけの発言量だと言われています。この Note and Vote は発言そのものを均等にするのではなく、個々人に並行して”書かせる”ことで擬似的に発言量を均等にできる良い手法だと思います。

どういうときに有効か

特にこの手法が効果的なのは、

  • シャイな人が比較的多い人がいるとき
  • 発言力が大きすぎる人がいるとき
  • 多様な意見を募りたいとき

などではないかと思います。少なくとも、意思決定の前に色々な意見が聞きたいときには特に便利です。

さらに効果的にするためのポイント

  • 文字だけじゃなくて絵などを入れると盛り上がる
  • 貼りだすときは特に美術館の絵画のように、横一列に極力なるようにする(縦にポストイットを張り過ぎると人がそこで滞留してしまうので)
  • 匿名のままにする
  • 重要なシールを貼るときは極力一斉に貼る(結局影響力の大きな人のシールに左右されがちなので)。もしくは影響力の大きな人は最後にシールを貼る
  • 二つの意見がコンフリクトしている部分は深く議論すべき価値があることが多いので注意を払う
  • 貼らないポストイットは破り捨てる(捨てるというのが明確になる)
  • 極力みんな立たせながらやる

また、特に最初のアイデア出しのときは、これを 2 周やると良いと思います。1 周目で出た他の人のアイデアを参考にすると、より多くのアイデアが出やすい傾向にあります。また大枠のアイデアが決まったあと、細かいアイデアを決めて行くときにも使えます。

決め方には注意

注意点としては、あくまでこの方法は民主的に意見が出せるというところであり、最後に決めるのはプロダクトマネージャや CEO などの意思決定者であるべきだという点です。コンセンサスが取れたアイデアがそのまま良い意思決定につながるわけではありません。むしろコンセンサスは良いアイデアを殺します。

なので事前に「誰がどのような決め方で最終的に決めるのか」をチームに伝えておかないと、結局フェアではなくなってしまいます。そこは注意して下さい。

その他

用意するもの

  • ポストイット(できれば 127mm * 57mm などの大きめのもの)
  • 太めのサインペン
  • 丸型のシール(追記:ポストイットの色と異なるもの)
  • アイデア出しのときのタイマー(スマホで OK)

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その他の参考になる記事

Design Sprint とは

Design Sprint の詳細はこちらからもご確認いただけます。

http://www.slideshare.net/takaumada/design-sprint-guidebook-v2/47

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Taka Umada

The University of Tokyo, Ex-Microsoft, Visual Studio; “Nur das Leben ist glücklich, welches auf die Annehmlichkeiten der Welt verzichten kann.” — Wittgenstein