新年の抱負を支えてくれる環境を選ぶ
「人間が変わる方法は3つしかない。
1つは時間配分を変える。
2番目は住む場所を変える。
3番目はつきあう人を変える。
この3つの要素でしか人間は変わらない。
最も無意味なのは「決意を新たにする」ことだ」
という大前研一の言葉は、しばしば引用される程度に説得力がある言葉だと思っています。
この文脈では、新年の抱負はまさに「決意を新たにする」ということにあたり、あまり効果がないものとも言えます。
一方で、変わるために有効だとされている 2, 3 については「自分の環境を変える」ということです。
行動経済学や社会的ネットワーク分析の知見が指摘する通り、人間の意志は、自分たちが考えている以上に環境に影響されるようです。人間の意志は自分たちが自覚するよりも脆いものだ、というのはここ数十年で様々な研究で再三指摘されていることのように思えます。
だとすれば逆に、私たちはその意志の脆さや影響されやすさを活用できるのでは、とも考えられます。
そうであれば、新年の抱負を考えると同時に、その抱負の実現に結びつく環境を身の回りに作るか、あるいはそうした環境に飛び込むか、を考えるべきなのかもしれません。
環境の重要性
残酷な成功法則では、ハーバード大のムクンダ助教授の「成功するなら自分にあった環境を選ぶことが大事」という指摘も引用されています。当然ながら、どんな才能も適切な環境に置かれない限りその真価を発揮できません。
そして実際、「社会人になって早い時期に頻繁に転職する人は、キャリア最盛期に高賃金、高収入を得ている傾向がある」そうです。これは自分の才能が活かされる環境をキャリアの早期に探索していた結果と解釈できます。同様の指摘は、Chris Dixon が山登り法の比喩を使いながら説明しています。
さらに最近では『成功する人は偶然を味方にする運と成功の経済学』や『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか―労働力余剰と人類の富』では成功における環境やソーシャルキャピタルの重要性、そして習慣をテーマにした様々な本では習慣化の鍵として環境の効用が説かれています。
環境を変える力、選ぶ力
進学校に通っていた学生と話をしていると、周りが勉強しているから当然勉強していた、という話を聞きます。周りが技術コンテストに参加しているから自然と自分も技術コンテストに参加して、そこで技術力を伸ばした、という学生もいました。最初は親から指定された環境でも、その環境は行動に大きく影響します。
一方、小中高大、そして就職と、エスカレーター的に環境が変わってきた時期に比べ、社会人になってからは自ら意識的に環境を変えていかないと、長くその環境に居続けてしまうように思います。
そういう意味で、(自分にあった)自分の環境を変える技法というものは、実は若い内に身に着けておくべき一つのスキルなのかなと思います。
実際、学生の皆さんと付き合っていて感じるのは、自分の属する環境を変えてくことに躊躇のない学生は、短期的に目覚ましい成長を遂げることがあることを感じます。特にイベントに顔を出したり旅をしたりするなどの一過性のものではなく、長期的に何度も集まるような環境(留学や引っ越し、研究室移動など)に変化をつけることが重要なのかなと思っています。
しかも複数のコミュニティに深く関わっている学生のほうが、周りからの助力を得やすく成果も出しやすいように感じています。
上記で引用している残酷な成功法則でも「人は、一つだけでなく、いくつもの社会集団に帰属するほうが、困難から立ち直る回復力が高まり、ストレスを乗り越えやすくなる」という研究結果も紹介されています。これは「自立とは依存先を増やすこと」の指摘とも類するものだと思います。
選んでもらえるような環境とエコシステムを作る
個人的には、スタートアップの最初期における、技術を持つチームの生産性を最大化するような環境やエコシステムを本郷の周りに作ることができれば、と考えています。
本郷にいればスタートアップが成功しそうだとか、本郷のスタートアップコミュニティに属してみたいと思ってもらえるようなエコシステムをどうやったら作れるのか、そんなことを考えながら来年は活動していきたいなと思いました。