Web 系の MVP / プロトタイプの作り方の一例

Web サービスの場合、様々なやり方で MVP やプロトタイプを作ることが可能です。

ここでの MVP (Minimum Viable Product: 実用最小限の製品) やプロトタイプは、いわゆる「ベータ版」とは少し段階が異なります。ベータ版は製品に近く、一方、MVP やプロトタイプ(の一部)は検証のために作られます。より正しくいえば、検証の結果からの学びを得るために作られるのが MVP です。

以下の図の左端にある「Critical Function Prototype」に近いのが MVP であり、収束に近いところがベータ版だという風に考えれば良いでしょうか。

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A Method for the Management of Service Innovation Projects in Mature Organizations (2011) の図を一部翻訳

スタートアップの最初期に検証したい仮説(学びたいこと)の一つは「顧客にニーズがあるかどうか」と、もう一つは「製品が提供するアウトカム(顧客にとってのプログレス)が価値を持つかどうか」です。

後者の検証をする場合、ベータ版ぐらいまで作りこまなくても仮説の検証が可能な場合があります。そこでこの記事では、いくつかの MVP と、2019年に使えるツール群、その探し方について解説します。

一部手作業型 MVP(オズの魔法使いMVP)

この MVP はランディングページ(LP)や注文表面だけを作り、裏側の処理は手作業でやる、といったものです。

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Webサービスの一部は、「人がやっていた何かの作業を機械に任せることで、早く間違いなく行ってもらうこと」が中心的な価値です。なので、逆に考えれば、機械がやるはずだったことを人間もできるはずです。

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例えば Zappos の最初期には、まず Web サイトだけを作って、注文があったら靴屋に行って注文の商品を買い、梱包して発送していたことは有名です。またフードデリバリーの Doordash は近くのお店のメニューを PDF にして、そのPDFに自分たちの連絡先を書いて、注文を待っていました。そして注文があれば、自分たちで宅配をしていました。

全手作業型 MVP(コンシェルジュ型)

コンシェルジュ型 MVP も有名な事例です。アプリなどは基本的に作らないものの、完成したアプリが提供するプロセスを、まずは自分たちが手作業で行うようなものです。

献立を作るアプリやサービスを考えていたスタートアップは、何もアプリを作らずにスーパーの前に立ち、スーパーで買い物に悩んでいる人たちに声をかけて、献立を代わりに考えてあげました(そしてお金をもらいました)。アルバイトとして顧客の会社に入り、自分たちのサービスがもたらすであろう労働を人力で提供し、そのサービスの価値を検証してみたチームもいます。

「機械学習を使ったレコメンド」みたいなサービスは、まずは自分たちで作業でキュレーションしてレコメンドしてあげるところから始めても良いかもしれません。こうすることで、自分たちが今から作ろうとしているものが、顧客にとって価値があるかどうかをある程度判別することができます。

既存ツールを使った MVP

ハードウェアのプロトタイプは、既存の部品を組み合わせて作られることも多々あります。たとえば iPhone の試作では、PC 用の既存の基盤がむき出しのものが作られていました。

ハードウェアではこうしたプロトタイピングが可能ですが、ソフトウェアではどのようにすればよいのでしょうか。

それは既存のツールを活用してみることです。

たとえば Product Hunt は最初、ウェブアプリではなく、メーリングリストで代用して最初のニーズの検証をしました。このように検証したいことによっては既存のツールや、既存のツールのカスタマイズをして代用することができます。

そしてハードウェアでもソフトウェアでも、とにかく何かを作ってみることの効用は計り知れません。

私の観察の範囲では、多くの学生の方は作ることからあまりに逃げてしまいがちです。でも実際作ってみると、チームに弾みがつきますし、新たなアイデアの発想が出てきます。だからこそ作らない MVP だけではなく、作る MVP にもぜひチャレンジしていただきたいと思っています。

とはいえ、「作ろう」という声掛けだけではなかなか人は動きません。そこでこの記事では、「既存ツールを使った MVP」のためのツールセットを紹介して、ちょっとでも「作るMVP」への足場架けにできればと思って書いています。

注意:この記事でカバーしない MVP

ランディングページの MVP や動画の MVP などはちょっと使いどころが難しいと思っています。これらの MVP はまだ競合がいないような、新しい市場でのユーザーニーズを確認するときにこうした手法は有効だと思います。ただそうした領域で最初にやるべきなのは顧客インタビューでしょう。さらにこうしたMVPで検証しているのは「ニーズがあるかどうか」ではなく、「十分な量のニーズがあるかどうか」のほうが主眼ではないでしょうか。それにこれらの MVP は、製品によるアウトカムの検証にはなりません。それに作らないMVPの中でも、特に作らないMVPに類するものであり、学びが少ないケースも多々あります。

なお、日本国内では SmartHR さんがうまくランディングページを使ったニーズの検証を行っており、決してその有用性を否定するものではありません(「その業界を知らなくてもBtoB事業は立ち上げられる」−やり方とコツ−)。

プロトタイプを作る

ここからは Web サービスの機能の一部を既存のツールの組み合わせで解決しようとする方法を紹介します。

Google Sheets を使ったプロトタイプ

  • アナリティクス系だと、Google Sheets の Public にする機能を使えば、それなりのグラフを出すことができます。
  • 当然ですが Google App Script を使えば様々な処理ができます。Google Sheets は多くのMVPの味方になってくれるはずです。
  • Google Sheets を組み合わせて使える製品を Product Hunt を見てみても良いでしょう。Sheet 2 Site や Glide はその一例です。
  • もう少しリッチなものにしたいのであれば、Airtable を使うという手もあります。Airtable Templates を参考にしてください。

Wordpress を使ったプロトタイプ

  • Wordpress はブログが書けるだけではありません。プラグインを使うことで、他の使い方もできます。たとえばコマース機能なども追加できます。
  • Ultimate Member は SNS の標準的な機能を提供してくれます。

No-Code 系を使ったプロトタイプ

  • Glide は Google Sheets のデータを基に標準的な機能を持つアプリを作成してくれます。AppSheet も似たようなコンセプトのサービスです。
  • BubbleThunkable はビジュアルプログラミングの機能を提供してくれます。かゆいところには手が届きませんが…。

EC や C2C のプロトタイプ

  • 大体の購買系は Shopify で作れば事足ります。アドインなどを駆使すれば、マーケットプレイス型のものなども作れます。

C2C 系のプロトタイプ

  • プロトタイプではないですが、Osclass を使うのも手だと思います。

SNS のプロトタイプ

  • Mighty Network や Mobilize、Basecamp 3 などを使ってみて下さい。
  • Wordpress の Ultimate Member などを使ってみても良いでしょう。

コミュニティ系のプロトタイプ

検索関係の MVP

他の手法がないかを探す

  • Product Hunt を関連キーワードで探してみてください。似たようなものがたくさんあるはずです。それを使ったり、他と組み合わせてみましょう。
  • 一つのツールだけで完結しない場合は、Zapier などを使って複数のツールを組み合わせてみましょう。

最後に

雑でも良いので、何かを作るとチーム全体にモメンタムがつきます。そして一度モメンタムがつき始めれば、その協力してくれる人も増えてきます。「Product Market Fit までは岩を押し上げる山登り」だとも言われますが、何かを作ってみることは、その岩をちょっとだけ押し上げてみることにつながります。そして岩が少し動く瞬間を見た人たちの一部は、あなたの強力な味方になってくれるでしょう。

特にエンジニアの方は「アイデアだけがある」状態の人よりも、「とにかく何かを作ってみた」人のほうを手助けしたいという気持ちになります。ぜひ既存のツールを組み合わせて MVP となるようなものを作って、検証してみて下さい。

Written by

The University of Tokyo, Ex-Microsoft, Visual Studio; “Nur das Leben ist glücklich, welches auf die Annehmlichkeiten der Welt verzichten kann.” — Wittgenstein

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