互助Tech、共助Tech (あるいは C2C)
遅ればせながら『教養としての社会保障』を読みました。読後思ったのは、現在薄まりつつある「互助」や「共助」の概念を、テクノロジを用いて過去とは少し異なる形で実現できるのではないか、ということでした。
自助、互助、共助、公助の違い
まず用語の整理をすると、以下のようになります(板橋区の解説)。
- 自助:自分で自分を助けること
- 互助:個人的な関係性を持つ人間同士が助け合うこと
- 共助:制度化された相互扶助のこと(保険や年金など)
- 公助:自助・互助・共助では対応出来ないこと(困窮等)に対して最終的に必要な生活保障を行う社会福祉制度
(※もともと社会保障という共助制度は、ギルドの互助制度を手本にできてきたようです。)
日本では自助ばかり
日本では経済環境の変化で地域を離れる人が増え、生活の変化で近隣での互助が薄まり、また共助や公助に頼ろうにも国の財政が悪化していて、もはや頼れるものは自分自身だけ(しかも『世間』は自己責任論を肯定)……となっているのはさすがに生きづらい状況です。
とはいえ、それをもとに戻せ、というのは経済の流れからしておそらく無理な話です。
だから、現代のテクノロジとビジネスを使って、いかに公助に頼らず、互助の範囲を広げて共助の範囲を広げていくか、あるいは個々人に『溜め』を作っていくかが重要になってくるように思います。
互助Tech、共助Tech
こうした課題にアプローチするスタートアップを InsurTech や GovTech などにならって「互助 Tech」「共助 Tech」などと呼んでみると分かりやすくなるかもしれません。
これまでは信用を効果的に貯める手段がなかったせいか、互助は家族や地域といった物理的で所与のものに縛られていました。それをテクノロジによって広げ、かつテクノロジによって一部の信用を担保しながらビジネスとして維持している例として、
- サービスの提供(Airbnb や Uber、ココナラさんなど)
- 保険の提供(P2P 保険、たとえば justInCase さんの説明)
- ソーシャルレンディング
などがあり、様々な C2C サービスが、これまでになかった互助の関係を、ちょっとした金銭(利鞘)とテクノロジによる信用補強を通して実施しているようにも見えてきます。
そしてこれらはビジネスモデルが成り立つかどうかなどはまだまだ分からないので、それこそスタートアップがやるべき領域とも言えそうです。(ただ資本的な体力がないので難しいところでもあるとは思いますが)
もちろん、そうしたものは FinTech だ、と呼ばれるかもしれません。たしかに表面的にはお金を扱うので Financial-Tech です。ただその背景に共助や互助といった思想があるかどうか(単にお金儲けをしたいだけではないか)を見るのは、意味のある行いではないかと思います。
またこうした FinTech の領域をやりたいという人が、過去の時代においてそうした制度や仕組みがどのように成立してきたのかを知る上で、『教養としての社会保障』は簡単に読める良い入門書ではないかと思います。お勧めです。