Lean, Jump, Idea — Draft

高萩さんの「リーンスタートアップはうまくユーザーの抱える課題は特定できたとしても、それに対してどのような解決策を産み出していくかの方法論が不十分と感じました。そのため競合品の改良になりやすいかなと思いました。」というコメントに触発されて昨晩からうだうだ考えてました。

いや実際そうなんですよね。解決策を生み出すところについては Lean はほとんど何も言ってない。Execution やアイデアの検証の手段はいろいろあって、それを挙げ連ねるのは大変なぐらいなのですが、アイデア発想や仮説構築についてはあんまり言ってなくて、Running Lean の Ash Maurya のサイトとかにもちょっとあるぐらいかなと。

Lean Startup で特にアイデアが必要なところが2つあって、1つは課題を発見するというところ、そしてもう1つが課題を解決するソリューションを考えるところだと思ってます。

顧客の声は fact としてあるけれど、一方で顧客の声を聴くべきだが顧客の声を信じてはいけない、とよく言われるように(Ford の「顧客に聞いていたらもっと速い馬が欲しいと言っていただろう」的な話)、顧客の声という fact はあくまで opinion であって何かしらの根本原因が個人を通して抽象化されたものであると考えるのが適当。人間は自分の気持ちや体験をうまく言葉にできるとは限らないので、顧客は顧客の本当に課題を知らないし、Jobs も言ってたように顧客の課題を見つけるのは顧客の仕事ではなくビジネス提供側の仕事です。彼らの声からどういう課題を導くかはジャンプが必要で、ジャンプが必要だからこそ検証が必要 (customer/problem fit) 、というのが1個目のジャンプ。

さらに顧客の課題の insight がある程度間違っていないことが検証されて、次に課題を十分に解決できるソリューション(別にプロダクトでなくても良くてConcierge MVPなどを想定)を考えられるかはまた別のジャンプが必要 (problem/solution fit) というのが2つ目。

スタートアップで言えばそこからスケールできるかとか、マーケットが十分あるかとか、既存の10倍以上のバリューを提供できるかとか、あるいは Lean Canvas とかの観点からアイデアを色々検証して、product/market fit に辿り着くわけですが、初期のスタートアップにおいて大きくは上記の二つにおいて insight というかジャンプが必要です。

ここでいうジャンプとはまさに発想の飛躍で、アイデアや仮説構築と言っても良く、つまり私のいつもの問題である「仮説のセンスのありなしはどこから生まれるのか」みたいなところに落ちてきます。たとえばエスノグラフィ的な観察の手法を取り入れたところで、そこからどのような insight を得るのか、あるいはそもそもどのようなファクトを目ざとく見つけるのかは最早センスというほかない。センスがあれば一発で答えに辿り着けるのでしょうが、如何せん私をはじめ凡人にはセンスがない。

じゃあ方法論に頼りましょう、ということになるのですが、アイデアを出す手法と言うのは、昔ながらのブレインストーミングとかKJ法とか Customer Journey Map とか色々あって、そういう手法が人口に膾炙しているというのに、中々良いアイデアが出てこないなぁというのが実感としてあります。じゃあいったい良いアイデアを出しているところはどうやっているのか、という疑問に行き当たります。

モダンなアイデア発想の方法論といったらやはり今はやりのデザインファームかなぁ、というところで、IDEO 的な ideation と frog 的な ideation あたりを見ていたのですが、公開されている手法を用いたところであまり良い成果が出たとは中々聞きません。しかし、実際に IDEO や frog はいい仕事をしているようですし、実際に色々本を読むと参考になることがいっぱい書かれてある(frog だと「一見うまくいっているところにイノベーションできる領域がある」という話が好き)。またスタートアップへの人材輩出も IDEO や frog は強い。

彼らのやり方の中にたぶん何かあるんですよねー、手法に回収されない剰余としての何かが、と思っていて、であれば手法ではなくその周りにある環境のほうにも目を向けるべきなのかなと最近になってようやく思い至りました。

で、今のところの私の仮説は、結局「どれだけいいチームなのか」ってのと「どんだけ早くモノ(プロトタイプ)を作れるスキルがあって、その low-fidelity が許される環境なのか」ってところが良いアイデアが生まれるかどうかを決めるんじゃないのかなぁと思ってます。おおよそ大企業の 7 割ぐらいの新製品や新機能は失敗です (Lean Customer Development とかに書いてあった)。実際転載の集まる Facebook で作られた Slingshot や Rooms ですら燦々たる結果なわけですし (かろうじて Hyperlapse が微妙なライン)。彼らが効果的なメソッドを導入していない、というのは合理的に考えておそらくなくて、何かしらメソッドを導入した天才たちも失敗しているのでしょう、ということになります。とはいえ別にメソッドが効果的ではないと言っているわけではなく、やっぱりメソッドだけを入れてすぐに成果が出るような方法論があれば、金持ち企業はそれをきっともっとうまくやってるというだけで。

ていうことで、この正月に IDEO の The Art of Innovation とか Ten Faces を読みなおしてたところ、チームとかプロトタイプの話があって、実は詳細な方法論はないってことに気づきました(いやまあ、2個プロトタイプを出す、とか細かい参考になるものもあるのですが、それはエッセンスではなく経験から deduction できる範囲かなと)。大きいコンセプト過ぎて逆に見過ごしてたなと。大手企業にできていないことを逆に考えれば、大手企業では構造的にできない点、あるいはより再現不可能な点に目を向けるべきだったのでは、と。となるとやっぱり文化やチームという抽象度の高いところなのかなぁと。

あと見としがあるのに最近気づきました。映画です。個人的に映画好きというのもありますが、特に Pixar に目を向けてみると Pixar の映画はおおよそ当たってます。あれほど連続して良い興行収入を叩きだしているのは、映画業界広しといえど Pixar ぐらいじゃないでしょうか。しかも毎回ほとんど違う作品で、creativity が必要とされる業界で成功している。たぶん彼らにも何かがあるのかと。

でどんなことをしているのかを Brain Trust という集団討議ですね。それが効果がある、と何度も言及されており、チームでの討論と言うのはやはり大事だなと。まあご存知の通り私結構個人主義的で、基本的に個人で出すアイデアがベストだと思っている人間なのですが、そんな私がチームって大事だなと思うに至るわけなので、中々なぁと思います。実際、自分よりレベル高い人と話していると、発想が色々出てくるときがあって。とはいえ実行はある程度少数でやったほうが良いとは思ってます。GitHub のプロジェクトも結局少数の中心メンバーがほとんどのコードを描いていた時のほうが生産性が高いようですし。

まあこうして何かがある、というのを前提にして模索していくスタイルには我ながら Lacan 的なものを感じますが、まあ辿り着くことはない(辿り着いたときには辿り着いていることに気づかない)のだろうと思いつつ、探し出す努力はしたいものです。ああ、Growth に比べてなんか歯切れが悪いなぁ。まあ吐き出すことでまとまるものもあるでしょうし書き捨てです。関連で過去に読んだ本はこちら。

■IDEO:
Creative Confidence: http://www.amazon.com/dp/B00CKE05ZY/
The Ten Faces of Innovation: http://www.amazon.com/dp/B000FCKPKS/
The Art of Innovation: http://www.amazon.com/dp/B000S1LAUA/
Change by Design: http://www.amazon.com/dp/B002PEP4EG/
Thoughtless Acts?: http://www.amazon.com/dp/0811847756/
HCD Toolkit: http://www.designkit.org/resources/1
IDEO Labs の記事とか: https://labs.ideo.com/2014/09/19/digital-tools-for-design-research/

■Frog:
Hidden in Plain Sight: http://www.amazon.com/dp/B008B0ULDW/
Disrupt: http://www.amazon.com/dp/0137025149/
A Fine Line: http://www.amazon.com/dp/0470451025/
Frog Design Action Toolkit: http://www.frogdesign.com/work/frog-collective-action-toolkit.html
Frog Design の Bookshelf: http://designmind.frogdesign.com/blog/what-you-will-find-on-a-design-researchers-bookshelf.html

■Pixar:
The Pixar Touch: http://www.amazon.com/dp/B0010SKT0M/

Written by

The University of Tokyo, Ex-Microsoft, Visual Studio; “Nur das Leben ist glücklich, welches auf die Annehmlichkeiten der Welt verzichten kann.” — Wittgenstein

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