スタートアップのノウハウとその伝え方(を悩んでいるという話)

Taka Umada
5 min readNov 1, 2017

「スタートアップのスライドはもう書かないんですか」と言われることが最近何度かありました。個人的にも色々書きたいことはあるのですが、なかなか優先順位が上がってきていません。

理由は、

  • 一般論は大体書いたのでは…と思ってるところはあります
  • 細かいノウハウは私一人がまとめるよりも、そういうノウハウが伝達するエコシステムを作ったほうがいいので、そっちをやろうかなと思ってます(本郷スタートアップご近所さん会地域活動等)
  • 伝え方の How の部分を模索していて悩んでいるからです

といったところです。図にするとこんな感じです。

今日は特に3つ目の How の部分に関してちょっと書きたいと思います。

ノウハウの伝え方のノウハウ

自分がスタートアップのノウハウについて書いたスライドは「これ読んでおいて」と渡されることが結構ある、と聞いています。ただ、それだけでは不十分だというのが最近実感しているところです。なぜなら、

  • そもそも読んでくれない
  • 読んだ後身につかない

などの問題があるからです。

今のスライドでもリファレンスとしては使えるのかもしれません。ただ、そうした知識やノウハウを定着しやすい形で伝えていくこと、そして自ら学ぼうと思ってもらえるように inspire していくにはどうすればいいのかを考えなきゃなと、学生たちとの交流を通して改めて感じています。

たとえば最近、日経の中田さんのスライドがバズっていましたが、「シリコンバレーには(手法の)規律がある」という部分でデザイン思考、アジャイル、リーンスタートアップが挙げられていました。

デザイン思考などの手法は既にある程度形式知化されていて(もちろん表に出ているのは表層的な部分だけだとは思いますが)、あとはそれを実践するだけ…という状況が少なくとも 5 年は続いているはずなのに、日本ではなかなかそうならないように見える、それは何故だろう、とも思います。

アジャイルなどの浸透に時間がかかったのは日本のビジネス構造が大きな課題だったと思いますが、新規事業が国内でも盛り上がっている昨今、リーンスタートアップやデザイン思考のノウハウはもう少し広がってもいいのかなと。

Google Trends で「デザイン思考」を検索 (2007/01–2017/11)

一方で、数年前の話ですが、「シリコンバレーでリーンスタートアップの本を読んだ経験のある人はそこまで多くなかったりするけれど、知識として知らなくても、なぜかそれを自然と身に着けていて実践している」という話を聞いたりもして、

  • あっちの人はワークショップ大好き(Active Learning の潮流の影響?)
  • 知らずと身につけられる環境を作ることが大事

などを思って、最近はワークショップ (e.g. 逆張りワークショップ) を試したり、エコシステム作りに注力をしてます。

ただこれだとスケールしづらいのと、成果が測りにくいのでまだまだ模索中…という感じです。最終的には色々組み合わせながら進めることになるとは思うのですが。

東大 Future Faculty Program

ここまで来ると教育側の知見を活かしたいなということで、現在、大学教員を育成する東京大学ファカルティ・ディベロップメント・プログラム(東大FFP)を受講していますが、非常に勉強になってます。東大の院生以上なら受けれるようなのでお勧めです。また京都大学の高等教育研究開発推進センターのコンテンツもとても参考になります。

日本企業は新卒採用にはお金をかけるけれど、人材開発や組織開発に投資をしていないというデータが平野正雄『経営の針路』に掲載されていました。

平野正雄『経営の針路

GE などが率先してスタートアップのノウハウを企業内に取り込んだり、SpaceX が謎のスピードでハードウェアを含む製品のサイクルを回していたりするニュースを見ていると、日本で教育への投資額が低いのなら、教育効果を最大化していくためにもこうしたノウハウの教え方や学び方を企業側がうまく受容していかないと、競争力が維持できないのかなと思う所もあり(たぶん人材開発費を増やしてセミナーとかに投下しても効果が薄い)、どうにかこのあたりを大学で知見を溜めつつ、溜まった知見を企業側にも情報として提供していければと思っている最近です。

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Taka Umada

The University of Tokyo, Ex-Microsoft, Visual Studio; “Nur das Leben ist glücklich, welches auf die Annehmlichkeiten der Welt verzichten kann.” — Wittgenstein