「産業の次のボトルネックはどこ?」から始まるアイデア

Taka Umada
5 min readNov 16, 2017

B2B 系のスタートアップが狙うべきところとして「産業の次のボトルネック」部分という着眼点もありなのかな、という話をしました。

今のボトルネックと、次のボトルネックはどこ?

たとえば Astroscale さんが目をつけるボトルネックはデブリだと言えます。それは今後 SpaceX や Skybox、Axelspace などにより宇宙ビジネスが拡大し、小型衛星が宇宙で増える中で、故障する小型衛星や宇宙ゴミの除去が大きな課題(次のボトルネック)になる可能性が高いからです。

しかし 2014 年に CEO である岡田さんが書かれた著書『宇宙起業家』には「客がまだいない」と書かれていました。つまり起業当時は「今」の宇宙産業のボトルネックではありませんでした。

2014 年創業の Elephantech さんは「製品のライフサイクルの短期化や多品種小ロット生産の流れがある中で、3Dプリンタ等が流行して一部のボトルネックが解消されつつあり、製造業の次のボトルネックは基板」と予想し、フレキシブル基板における新製品を提供しています。

大手は得てして研究・開発費が高い。それには人件費だけでなく、大手が基板の試作を外注して、その完成を2週間ほど待っていることがボトルネックになっている。その間、研究は次のステップに進めない。高給な研究者の手が止まってしまうため、コストがかさんでしまう要因となってしまうわけだ。

今注目を浴びる MUJIN さんのロボットアームのピッキングも、現在物流のボトルネックのところがピッキングだからこそ注目されています(この分野では Amazon Robotics Challenge でピッキングを題材に取り上げていることも有名です)。

MUJIN さんは 2011 年創業ですが、2017年の今まさにこうした状況になっています。周囲の技術の発展と自分たちの技術の発展、そしてビジネス環境の変化を予想(あるいは変化に適応)して、ピッキングの技術でボトルネックを解消して大きな価値を出そうとしている、と見ることが出来ます。(その結果、ニュースによれば、中国の二番手 EC サイトの JD.com の自動倉庫に彼らの作ったピッキングアームが納品されています。)

このように産業全体のボトルネックになっている部分が解消されて、産業のスループットが増えれば、その解消は大きな価値を持つことができ、結果的に大きな利潤を生むことができます。逆にボトルネックになっていない部分を攻めてしまうと、大きな価値を生むことができず、利潤にも繋がりません。

また、なぜスタートアップにとってのアイデアが「今」ではなく「次」かというと、今ボトルネックの部分には多くの企業がそこを解決しようと資源を傾ける傾向にあり、その領域ではリソースがないスタートアップが勝つのは至難の業だと考えるからです。しかし「次の次」や「次の次の次」だとスタートアップはそこまで生き延びることができません。

もちろん例に挙げたスタートアップの皆さんも、最初からそのボトルネックに気付いてそこを攻めた、というわけではなく、色々探しているうちにそこに行き当たった、という部分もあるのではないかと思います。ただそうした探索のフェーズでも、「産業のスループットを上げる」ことや「次のボトルネックはどこか」に着目してみるのは、こうした事例を見るに一つの視点の整理の仕方なのかなと思ったので、記事にしておきます。

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Taka Umada

The University of Tokyo, Ex-Microsoft, Visual Studio; “Nur das Leben ist glücklich, welches auf die Annehmlichkeiten der Welt verzichten kann.” — Wittgenstein