技術の二次影響と社会の未来を語ること、それがスタートアップのチャンスを生む

スタートアップのアイデアは考えるのではなく気付くものであり、そして気付くためには未来に欠けているものを探すことだ、というのは Paul Graham の弁です。

そうした未来の想像の仕方の一つとして、主要なテクノロジが引き起こす社会の変化を想像してみる、特にその技術の二次影響、三次影響の予兆に気付こうとする、というやり方があるかもしれません。

過去を振り返ってみても、一つの発明が思ってもみなかったところまで影響した例がありました。Steven Johnson はそうした例を『How We Got to Now』で挙げています。

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(例1)活版印刷が顕微鏡を生む

書籍の普及は読書習慣を生みました。そこで自分の遠視に気付いた人達に眼鏡の需要を増やし、眼鏡のビジネスを生み出します。そして眼鏡に使われるレンズが増えて安価になると、そのレンズを使って実験する人が増えて顕微鏡が発明されました。そして我々は今や微細な世界、そして遠くの宇宙を知るに至っています。

(例2)塩素が水着を変える

ただ、塩素消毒はその課題を解決してくれただけでなく、清潔な水は世界各地にプールを生み出しました。その結果、新しい水着というビジネス領域が生まれます。20世紀初頭にはプール用の水着を作るために9mの布地が必要だったところ(それぐらい着込まないと危険でした)、1930年代末には90cmの布地でよくなっていたそうです。そして人々は多くの肌を露出できるようになりました。同時期、ハリウッドがそうした肌の露出を求めていたのも一つの要因とも言われています。

技術が引き起こす未来の社会を想像すること

Andreessen Horowitz (a16z) の Marc Andreessen は昨年 Stanford の Business School での講演の中で、成功するビジネスや未来を考えるために、「とある会社や技術が生まれたときに何が起こるのか、どういうインフラがそれを支えるのか、それが起こるのかどうかを見極めるためのシグナルは何か」といった質問を、好奇心を持って問うことを勧めています。

また同時期に同じく a16z の Ben Evans が「Cars and second order consequences」(車と二次影響)という記事を書いています。

例えば、かつてガソリン車が都市の風景を変え、郊外という生活圏を生んだように(そしてアメリカの発展を支えたように)、これから発展するであろう自動運転は都市のあり方や私たちの生活を大きく変えるはずです。

自動運転がある程度のレベルで実現されれば、移動中の人の時間の使い方は大きく変わります。移動中に眠れるようになれば、どういう生活スタイルになるでしょうか。例えば渋滞が解決されれば、土地の価格はどう変わるでしょう。また自動走行車が効率的に道路を走りつければ、駐車場は消えるのでしょうか、それとも異なる意味を持ち始めるのでしょうか。さらに道路に白線がなければ自動走行できないのであれば、白線が消えないようにきちんとメンテナンスをするようなインフラが必要になるかもしれません。Level 3 のシステムでも事故は大きく減るでしょう。では事故が減れば自動車保険はどうなるでしょうか。

さらに車に乗るパーツは大量生産されて一気に安価になるので、そのパーツを別のところに応用できるかもしれません。たとえば EV 車のバッテリーが安価になれば、搭載されている高性能な360度カメラが安くなればどうでしょうか? さらにいえば今アメリカでは、タバコの多くはガソリンスタンドで販売されているので、その売れ行きも変わるかもしれません。もしそれが変われば税収構造も変わってきます。

今起こりつつある気候変動は、南部の人たちが北上するきっかけになるでしょうか。日本国内では北海道がもしかしたら生活圏のメインになるかもしれません。しかしエアコンがより効率的になればどうでしょう? どのような問題が起こり、どうすれば解決できるでしょうか。

特化型人工知能の発展や自動化が引き起こす未来、職業に対する影響についても(やや過剰に)喧伝されています。その影響範囲をある程度的確に見定めることができれば、更にその先にあるビジネスの機会にも気づけるはずです。

未来を語ることと技術とスタートアップの機会

実際、Mark Zuckerberg はハーバード大学時代に、大学の寮でそうした議論をすることが多くあったようです。そうした会話や議論が、Facebook の大きなビジョンを遠からず支えているように思います。

大学にいた頃、世界が進んでいく方向について友達とよく議論していて、それが起きるところを見ることはもっと気にかけていた。

だからこそ、「もしこの技術が実現されれば、何が起こるだろう」「もしこの問題が解決されれば、何が変わるだろう」、そんな IF を議論する機会がもう少し身近にあっても良いような気がします。

もちろん技術の見識なしに空想の IF を語るのは SF 談義や風が吹けば桶屋が儲かる的な話でしかありません。しかし的確な技術理解に立脚した未来の話はきっとスタートアップのチャンスを生むのではないかと思います。

そうした機会がもう少し増えるように、本郷の周りでも未来の話をする場所やイベントを少しずつ増やしていきたいと思っています。

参考

Written by

The University of Tokyo, Ex-Microsoft, Visual Studio; “Nur das Leben ist glücklich, welches auf die Annehmlichkeiten der Welt verzichten kann.” — Wittgenstein

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