狂ったアイデアを見つけるということは物珍しいアイデアを見つける、ということではないと思っています。

一件珍しいと思われるアイデアのほとんどは、見込みがなくて誰もやらなかったアイデアや、人知れず失敗していって日の目を見ることのなかったアイデアです。なので、そのアイデアの表面上の珍しさや楽しさという部分だけを見てしまうと、ハッカソンやコンテストなどでは成功するかもしれませんが、スタートアップでは多くの場合失敗してしまうでしょう。

こうした罠に陥らないようにするためにも、有名な VC の Sequoia Capital がよく聞くと言われている、アイデアに対する「Why now」の問いに答えられるようにしておくことをおすすめします。

またスタートアップに必要なイノベーションというものを考えるとき、それは新しい技術の発明や進歩そのものではない、ということがよく言われます。その理由として挙げられるのは主に以下の 2 つです。

1.時間軸の問題
2.イノベーションの種類の問題

まず最先端の技術は、発明から商用化までに長い時間が必要であることが多く、スタートアップ向きではない、と言われています。例えば飛行機の発明(飛行の成功)は 1903 年です。その後、軍事で使われ始めたのが 1914 年、航空会社が生まれてくるのが 1920 年前後、需要が拡大したのが戦後の 1940 年代と、発明から 30 年程度かかって成長期を迎えています。クーンのパラダイム論でも、新しいパラダイムの普及にはおおよそ 30 年程度かかると言われています。

近年は発明から実用化までのスパンが短くなってきていると言われてはいますが、たとえば近年でも量子アニーリングという 1998 年に提唱された手法は、量子コンピュータの D-Wave のビジネスとして結実するまで 10 年以上の時間がかかっています。もちろん D-Wave がこの後、航空業界のように急激な成長をするかどうかはまだ分かりません。

スタートアップは短期間に急成長を目指す組織です。なので、こうした長時間がかかる課題に取り組むのであれば、スタートアップ以外のやり方のほうが良いのではないかと思います。

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http://web.mit.edu/6.933/www/Fall2000/teradyne/clay.html

また新しい技術が関係するイノベーションの種類も考えてみる必要があります。

技術の進歩そのものは持続的イノベーション、破壊的イノベーション、効率化イノベーションのいずれかに繋がることが多く、そうした技術の進歩の多くは我々の生活を豊かにしてくれる素晴らしいものです。

ただし、急成長を是とするスタートアップが狙うべきイノベーションは、多くの場合持続的イノベーションではありません。

なので、単に技術の進歩や新しい技術がイコール、スタートアップの優れたアイデアかというと、そうではないという結論になります。

ただしそれはスタートアップに技術が不要ということではありません。技術の進歩だけではスタートアップが成功するかどうかは分からない、というだけであって、多くの場合、未解決の課題を解決するには新しい技術が必要です。

その問題が未だに残っているという事実は、多くの場合、様々なツールや技術の発展がなければ解決できなかったということを意味しています。だから思いつきのアイデアだけでイノベーティブなことが起こせることはほとんどないと言えます。

あるいは技術の進歩によって新しい問題が噴出している場合、その技術の進歩そのものを理解する必要があることがほとんどなので、いずれにせよ技術の理解が必要になります。

狂ったアイデアは何かの問題を解決するアイデアです。なので、多くの場合、新しい技術の習得が必要になります。

Written by

The University of Tokyo, Ex-Microsoft, Visual Studio; “Nur das Leben ist glücklich, welches auf die Annehmlichkeiten der Welt verzichten kann.” — Wittgenstein

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