スタートアップのお金と指標入門講座:収益 (Revenue & MRR)

読者対象はSeries A 以前の CFO のいないスタートアップを想定しています。以下はこの入門講座シリーズのリストです。

  1. バーンレート
  2. 収益 (Revenue & MRR & SaaS Quick Ratio) <- ここ
  3. 利益と利益率 (Profit & Margin)
  4. チャーンレート
  5. ユニットエコノミクス (CAC & LTV)
  6. 成長率 (MoM & CMGR)
  7. まとめ

最終的にリンク先の管理表を埋められるようになり、起業家と投資家がある程度同じ用語で話ができるようになるレベルを目標としています。なお、お金に関連するほとんどの指標は遅行指標ですのでご注意ください。

今日は Revenue (売上、収益) のお話です。Revenue はすべてのお金の基礎となる話なので、きちんと理解しておかなければ、特に投資家との会話の際に困るときがあります。

困った会話の例
起業家「我々の収益は $250k を超え 30% の MoM で成長しています。投資をしてください」
投資家「おめでとうございます。でもあなたの収益ってどういう意味ですか?」
起業家「グロスでの収益です。その中から手数料として 15% を取ってます」
投資家「ということは GMV が $250k で、実際の収益は $37.5k ですね。用語が間違ってます」
起業家「…」

実際にこうしたやり取りがありました。

予約、収益、請求、前受収益の違い

まず予約 (Booking)、収益 (Revenue)、請求 (Billing)、前受収益 (Deferred Revenue) の違いを理解する必要があります。それぞれ以下のとおりです。

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http://blog.saasmetrics.co/bookings-vs-revenues-vs-billings/

Booking (予約):青色

契約書や購読開始などで、顧客が支払うと約束した金額。たとえば月額一定金額の SaaS を年間契約した場合は年額が Booking されます。

Revenue (収益):緑色

会計上の収益。サービスが顧客に実際に開始された時点で発生します。SaaS の場合は月々のサブスクリプション期間終了時が Revenue の発生時になり、広告の場合は実際に広告が配信されたときに Revenue が発生します。また SaaS の年間契約で月額課金の場合、月額が Revenue として計上されることになります。

なお利益 (Profit) と収益 (Revenue) は異なるので注意してください。利益は収益から費用を引いたものです。今回とは別の投稿で解説します。収益はスタートアップにとって売上とほぼ同じです(厳密には収益には受取利息なども含まれます)。

Billing (請求):黄色

請求書を発行し、実際に銀行口座に入ったお金です。

Deferred Revenue (前受収益):赤色

請求書を発行して実際に銀行口座に入ったものの、まだサービスを提供していないので Revenue として計上できないお金のことを指します。例えば年額分の前払いなどは Deferred Revenue とみなされます。

多くの会話は Revenue をベースに行われます。本当にあなたの言う Revenue が Revenue なのかは、念のため財務に詳しい人に相談してみるのをおすすめします。

ビジネスによって Revenue の計上タイミングは大きく異なる

ビジネスや契約形態によって Revenue がいつ計上されるのかは大きく変わります。EC の多くは Revenue と Billing が同時に発生しますが、広告ビジネスの多くは Revenue のずっと後に Billing が発生します。また、広告業界など、すべての Booking が Revenue に変わるわけではない業界もあります(実際に広告が配信されなかった場合などがそのケースです)。

Book to Bill Ratio (BB Ratio)

また一つの指標として、Book to Bill Ratio が用いられます。計算式は以下のとおりです。

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予約はある種の先行指標であり、予約額が収益よりずっと多ければ良い兆候です。逆に予約額が収益より少ないのは悪い兆候と見なされます。特にテクノロジー産業でこの BB Ratio はよく用いられます。

ビジネスによる Revenue の違い

マーケットプレイス型のビジネスの場合、取引総額 (Gross Merchandising Volume: GMV) と収入 (Revenue) をきちんと切り分けて理解する必要があります。

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たとえばメルカリはマーケットプレイス型です。以下のスライドの「月間数十億円」は GMV であり、メルカリの手数料が 10% であることを考えると、Revenue はおそらく数億円になります。

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http://www.sbbit.jp/article/cont1/30300

GMV と Revenue は、特に間違いやすいので気をつけて下さい。

以後はマーケットプレイス型のビジネスではなく、SaaS ビジネスを中心にお話します。

MRR の計算:Product Revenue のみで計算

SaaS ビジネスにとって MRR (Monthly Recurring Revenue) は基本的な収益の単位であり、多くの会話が MRR をベースに行われます。ただし収益が全て MRR に加算されるわけではないので注意してください。

SaaS ビジネスの収益は主に二つに別れます。

  1. Product Revenue
  2. Service Revenue
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まずプロダクトの基本的な費用は Product Revenue です。ユーザーあたり月額 3,000 円など、プロダクトの基本的な機能を提供することで得ることができる収益です。

ただしSaaS などの導入の際、コンサルティングなどを提供して「一回だけ」の収益が入ってくることがあります。これは Service Revenue として見なされます。

MRR として計上されるのはこのうち Product Revenue 分だけです。顧客からは Revenue として一旦 Product revenue + Service Revenue の金額が入ってきますが、MRR の計算の際には Product Revenue だけを使って計算してください。よくあるミスが、ここで Service Revenue を足して MRR として提示してしまうケースです。

MRR の細分化

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また、MRR は 2 つに分かれます。基本的な MRR と New MRR +Expansion MRR です。New MRR はシート数拡大などでの新規 MRR です。Expansion MRR は上位グレードへのアップセルやクロスセルの収益が含まれます。

さらにそこからキャンセルやダウングレードを抜いた値が今月の MRR です。

SaaS Quick Ratio

SaaS ビジネスの成長性を測るため、SaaS Quick Ratio というメトリクスも提唱されています。計算は以下のように行います。

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SaaS は定期的な収益が上がるだけではなく、そこからさらにアップセルやクロスセル (両者とも Expansion MRR に計上) などが狙いやすいものです。そのため、こうした New MRR や Expansion MRR を測る指標があると便利です。

SaaS Quick Ratio は売上が立ってから 2 年目以降などで使うと良いと思います。

MRR の 2 種類

定期的な収益によって成り立つビジネスでは通常 Monthly Recurring Revenue (MRR) が使われます。基本的に SaaS は月額課金なので月額としていますが、年単位の場合は Annual Recurring Revenue (ARR) という単位で会話されることがあります。

一方、トランザクションが多いビジネスでは Monthly Run Rate (MRR) が使われます。同じ MRR という略語でも意味が異なるので注意してください。Run Rate は一回買い切りのビジネスや、タスク単位で課金するビジネスなどで利用されます。

またこれら二つのビジネスの混合形態もあります。どの意味で MRR を使っているかは気をつけてください。

Revenue Mix の分析

Revenue は様々な形で分析できます。様々な切り口を試してみて、新たな洞察を見つけるのに役立ててください。以下はその一例です。

  • 顧客カット:大規模な顧客に依存しているかどうか
  • プロダクトカット:どのプロダクトラインが売れ筋で、どのような変化をしているのか
  • 産業カット:顧客を産業別で見ることで、産業別のシナリオの構築や注力ポイントなどを把握できます
  • チャネルカット:どのような流通経路が効果的なのかを把握します
  • パートナーカット:どのパートナーが効果的に販売してくれているのかを分析し、パートナーとの連携を強めます。

参考資料

以下に一気通貫でまとめています。

Written by

The University of Tokyo, Ex-Microsoft, Visual Studio; “Nur das Leben ist glücklich, welches auf die Annehmlichkeiten der Welt verzichten kann.” — Wittgenstein

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