『カスタマーサクセス』をジグソー法で輪読する (2018/06/12)

Taka Umada
7 min readJun 13, 2018

2018/6/6 に発売した『カスタマーサクセス』の本の帯にコメントを寄せた関係で、6/12 に CS Hack というイベントで登壇と、『カスタマーサクセス』をジグソー法で読むファシリテーションをしてきました。

「帰ってから会社でやりたい」という話をいくつかいただいたので、やり方について簡単にまとめておきます。また記事後半には講演内容の補足を付けています。

ジグソー法について

Visible Learning で有名な Hattie の分析によれば、ジグソー法はかなり効果的な部類の教育法として、2017 年の調査からランクインしています。スコアで言えば 0.4 以上が効果的と言われる中で、ジグソー法は 1.2 のスコアという高さです。参考まで、宿題は 0.29 です。

ジグソー法は東大 CoREF東大 FD の説明が詳しいです。ここで簡単に流れを説明すると、以下のようになります。

  1. ジグソーグループと呼ばれるグループを複数作り、コンテンツを分割して担当を分ける(一つのコンテンツがジグソー状になり、それぞれの担当はエキスパートになる)
  2. 同じ部分を担当する、別のジグソーグループのエキスパートたちと集まってエキスパートグループを作る
  3. エキスパートグループで読み込みと議論を行い、理解を深めあう
  4. ジグソーグループに戻り、自分の担当する部分を説明する
  5. ジグソーグループでさらに議論を行う

日本でも輪読という形式は親しまれていますし、最近だとアクティブ・ブック・ダイアローグ®という取り組みもあるようですが、単なる輪読とジグソー法が少し異なるのは、同じ部分を担当する人たち同士で「エキスパートグループ」があるところかなと感じています。見ているとこの「同じ部分を担当した」というつながりで仲良くなる傾向があるようです。

個人的にはジグソー法のような学び方がある程度使われることで、より深く学べるようになると思いますし、同じ勉強会に参加する人たちが仲良くなるきっかけを作れるので、何かの場で取り入れてもいいかもなと思っているところでした。

そんな折、今回 CS Hack さんにたまたま登壇のお声がけをいただき、登壇だけだとあまりバリューが出せないなと感じていたところで、『カスタマーサクセス』の翻訳を出版された英治出版様と翻訳を担当されたバーチャレクス様に相談したところ、翻訳書を 10 冊ほどいただけることになったので、今回のイベントでジグソー法を実施してみました。

『カスタマーサクセス』でのジグソー法の手順

『カスタマーサクセス』の本にはちょうど 10 の原則があります。そこで10人グループで席についてもらって、これらの原則一つ一つについて担当者を決めていきました。

全体としては、こんな風に部屋にいくつかのグループがある状態です。今回は参加者が 70 人だったので、10 人のグループが 7 グループできました。

ジグソーグループでの自己紹介が終わった後、自分と同じ原則を担当する人たちが集まるエキスパートグループに移ります。

そして、別のジグソーグループのエキスパート同士が集まります。ここで担当パートの精読と、ディスカッションが行われます。(今回は7人でしたが、もう少し減らしたほうが良いように思います。4人ぐらいがやっぱり良いのかなと)

エキスパートグループのディスカッションを踏まえて、原則について自分で喋れるように準備してから、元のジグソーグループに戻ります。

最後にジグソーグループで、それぞれ担当の原則を発表してもらいました。今回は各原則 2 分でした。

その上でジグソーグループでも議論をしてもらい、最後に各グループで議論の内容をまとめて発表いただきます(今回のイベントでは時間の関係で少しスキップしました)。

問いの設定などが今回は難しかったので、「各原則をまとめて発表する」というところをゴールにしましたが、短い時間で他人が要約した本の内容を知ることができるので、そこそこの効果はあったのではないかと思います。

準備

実際の作業としては本を裁断して分割するのを 7 冊繰り返し…(大変でした…)

こんな形で10の原則を1グループになるように分けました。色付きのシールを貼って、どのジグソーグループかを分かりやすくしています。

イベント中にはこれを配布して、担当原則としてもらいました。

実施後

イベント終了後もかなり多くの人が残り、特にエキスパートグループで同じ部分を読んだ人同士で会話されていたようです。

同席されていた英治出版の方が、『本もまた「売り切り」モデルではなく、「読者の成功」のための書籍販売後も大事なのかもしれません』と最後の壇上コメントで仰っていたのが印象的でした。

ご参加いただいた皆様、準備にご協力いただいた皆様、ありがとうございました。

前半内容の補足

前半は『逆説のカスタマーサクセス』をベースにした内容を、2018 年版の内容を入れ込んで、xOps に関連して Customer Success Ops に関してお話ししてきました。

最近の Gainsight が CS をこのようにまとめています。

個人的にはこれにプラスしてオペレーションの観点が必要かなと思っていて、今回はそのあたりのお話でした。実際に Gainsight でも Customer Success Operation の話はたまに出てきています。たとえば「CSM が 5 人になったら CS Ops を雇うべき」という記事もあります。

スライドはアップしませんが、以下に参考にした関連資料を記載しておきます。

Rev Ops のレポートでこういう図が出てきますが、

Customer Success を考えるとこういう図になるのかもしれませんね、という話でした。

日本でも Corporate Engineering Team が立ち上がっていたりするところもでてきているようなので、ぜひ Customer Success にもそうした視点が入るといいのかなと思っています。

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Taka Umada

The University of Tokyo, Ex-Microsoft, Visual Studio; “Nur das Leben ist glücklich, welches auf die Annehmlichkeiten der Welt verzichten kann.” — Wittgenstein